短歌は馬車に乗って

スイートなエッセイです

東京日記18

依然、慣れない肉体労働の反動が残っており、肩が回らない代わりに食欲が旺盛、よもやのパンプアップ期間か、動けば食わねばという強迫観念かもしれないが、とにかく食べてすぐさま寝て、を二度ほど繰り返したらとっくに一日が終わっていて、起きたら深夜の二時だったので、代沢のセブンイレブンに来たら、店員の兄さんがきわめつけのローテンションで、いたたまれなくなるのにも既に慣れてはいるけれど、それにしても、あの自動レジとレジの後ろに只たたずむだけの店員の組み合わせは非常に気まずい。労う言葉が見つからないというか、その代沢のセブンイレブンは新聞の品出しが遅すぎるのを私は知っていて、たとえば週末前の夕方には刊行されているはずの東京スポーツが納品後、夜になっても紐を解かれぬまま陳列棚の横下にほっぽり投げられているのを忸怩たる思いをもって毎度見ているが、おそらくあの極めてダウナーな雰囲気の深夜ローテーションのポルノグラフィティみたいな髪型の兄ちゃんはレジの内側でネットフリックスかなにかサブスクリプションサービスをもってスピード感のある韓国映画鑑賞に忙しいとかで、深夜は揚げ物も揚げないだろうし、まずもって何もしていないはずで、いかにもそういう肩肘張らず頑張らない仕事があることを大肯定したい、ゆっくり首肯したい、深夜滞在おつかれさま!手術台の上みたいにLEDを浴びまくって不憫ですね!というような気持ちを私は常々持っているにしても、レジの後ろで何も打たずにただ待たれていては気まずくて困る。百円のコーヒーを頼むだけの私にそこはかとない呪詛のような視線を感じたりしなくもないから、どうせならそっぽを向いていてくれ、と思いながらも、アイスも一緒に買っとくかと根負けしてしまう所があって仕方なくチョコミントのバーを選択し、外へ出て食ったら、予想よりしっとりしていて馬鹿にならないクオリティですね!不気味なくらい美味しいです!

ともかく私は、現今の労働環境批判がしたいわけでもなければ、今月のデザート新商品紹介がしたいわけでもさらさらないのは言うまでもないとして、かといって世のつれづれを嘆きたいわけでもなくて、むしろ緑道のベンチに佇み夜風を独占している優越感に浸って俳句でも作るか、とか思ってもみなければ、それなりに気持ちいい時間を過ごしながら、明日の早起きに不安を抱えていなくもない。どんだけ寝るのか。中途半端に寝たら終わりなような気もするし、転んだらいつまでも寝れる自信がある。

それはそうとして、こないだ上野に行ったら、久しぶりの友人が「今日はワンカンにしよーぜ」って言ってワンカンなる即物/行動言語を初めて知ったが、それぞれのワンカンを買いに赴いた駅前のセブンイレブンは未だ自動レジが導入されておらず、インド人がせかせかと会計をしていたことに人知れず感動して、興奮しながら友人に伝えたら「上野まじで変わってなくてウケるよねー」と、まじで白けた顔で言っていて面白かった。