短歌は馬車に乗って

スイートなエッセイです

東京日記13

今朝起きて、外に出たら雨が降っていて、気分が良くなって喫茶店Tに行ったら既にカウンターは兄ちゃんとおっさんでいっぱいになっていて、その間に闖入した私はミーハーなのでモンクが流れていさえすれば気分がいいのだけれど、あんまり朝から客が多すぎてマスターもややめんどくさそう、やはり土日の下北は非日常に過ぎるから、出たら既に晴れまくっていて蒸し暑い。駅前の常にジモティでごった返している活気がやばいスーパーで特売品のとうもろこしとゴーヤを買ってしんや君家ち戻ったらモンクが流れていたので引き続き気分がいい。

そんでもってスーべニール、土鍋やら泡盛やら上等の皿やら色々、台湾の近くの島から届いていて、なんやかんや、闖入者ではあるけれど、米はすでに水で洗って切って水を求めさせていたから、炊いたり煮たり炒めたりして一緒に食った。

そんでもって今ウインズ帰りに新宿のジャズ喫茶に来たら、かきいれどきの日曜日、若いスタッフがさらに若いスタッフをまとめて捌いていてすごい、爽やかなグルーブがあってたまらない。金髪のホールの兄ちゃんが歌の入ってないインウォーキングバドなんか流して、カウンター横の若年寄りの兄ちゃんは体を揺らしている。首を節々で小さく振っている。目を合わさないで、私はどうしても口笛が漏れる。ギネスの泡が溢れて、グラスの口をナイフで切ってまた溢れる。青いTシャツの若わかとしたおじさんのCDのリクエストを一番あたらしいバイトの女の子が快く受けて、BGMがモンク以外の何かに変わったと思ったら、こちらの白いホーローの灰皿がまっさらのに交換されていたことに全く気が付いていなかったことに気付いた。

私はモンクがかかったらいつなんときも陶然となってアホになってしまうが、それ以外に全く疎い。あとはマイルスくらいで、それはどうでもいいけど午後六時前、突然渦中にあったラッシュは一瞬のことだったが、いつの間にか少しばかり落ち着いていて、マスク越しにもいかにも、よく頭と気が回りそうな金髪のホールが「買い物がてら休憩に行ってきまーす」とさりげなく残して地上に出て行って、私はなんだか感動している。

ついさっき、初めてここに来た大学生の女の子とかはお茶を締めたあと、レジのところでそわそわしながら「こちらバイト募集していませんか?」そりゃそうだ、金髪が受け「〇〇さん、いまバイトって足りてますよね?」「いまけっこう足りてるねえ、みなみちゃんも入ったばかりだし」とかいう気分、微妙で絶妙なタイミングというか命運ていうか、いきなり出くわしてしまった時の「我が」と「側」、切実さとそっけなさ、外界の事情による些細な落胆とか、さりげない興奮にまつわるあれこれ、何気なく通り過ぎていったことごとになんかなし、身に覚えがあって人ごとながら今、懐かしくて狂おしい。