短歌は馬車に乗って

スイートなエッセイです

モンク帽見つかる

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モンク帽が見つかったのは結局能口とあたしんちで昨日バイト中にあたしちゃんからメールがあった「ムンク帽あったよ!」再三になるが能口とあたしんちは本とモノで埋もれている森のような空中庭園で明らかにここで無くしているというぼやけた自覚がありながらなんべんもちゃぶ台に布団にひっくりかえし混ぜ返したりしたのに見つからないので半分諦めていたところ忽然とあったので拍子抜けしてしまった。しかしながら約四十五日の不在を越えた会瀬、はめた時の安心感といったらない。すでに季節外れの質感でなくもないがずっと一緒にいたい。蒸れて禿げても構わない。愛のひとつのかたちを学んだかもしれない四月二十二日午前三時この日をモンク帽記念日と制定す。
吉報が届き居ても立ってもいられんくなった私は最短ルートの終電は過ぎていたのだけれど、ちょうど経堂に家のあるらしい同僚のパターソンくんが新宿駅まで歩きしだったので付いていって徒然を聞いていた。予想はしていたが家飲み派らしい「お金もったいないですしねぇ」と言った彼は、他人事にとやかく言う筋合いはないけれど劇団の役者をやっているらしい、どうも役者自身から出資を募る劇団らしく近い公演のチケットを捌くのに云十万貢いだようで、「それはいわゆるねずみ講じゃぁないか」と言ってしまったが、ど根性ガエル系の風体のパターソン君はまるでこたえるそぶりもなく「えへへへ、違いますよ」と目を細めて笑っていた。想像するだにたくさん在るのだろう個人の表現したい欲求に罪悪感もなしに忍び込む営利を求めない風の営利団体、京都で確定申告の相談をするのに税務署に行ったとき窓口まえのソファで待っていたら劇団を法人化しようとしている女性が窓口で相談しているのが聴こえてきて曰く「お金稼ぎは本意じゃないんです経営とは一線を引いていますチケットやTシャツみたいなグッズは運営のために売るんですけど、、」職員「それじゃぁまぁ一応営利法人でいいですね」相談者「まぁ、、そうですねぇ、、」
なんか胃がムズムズした僕はどうせ免税になる申告をほっぽりだして東京くんだりに来た。
こういうもやもや自体が日本にいることの確信かもしれないけれど経理がスムーズにできるのが立身したオトナひいては自営業者のアタリマエみたいな平均化された優位性を驚くほどみんな持っていて、ほんとにそうなんか?という疑念が消えない。いやいや愚痴を言いながら平均的なクオリティの実務をこなしている。確定申告とか表現的な愚痴をつくるための装置だと達観してるんだろうか。どうも冷静とは思えない。この文脈で考えるとパターソン君の存在自体がひときわ愛らしいシニカルだ。いちいち一応自分でやってる例えば下宿に家賃を払ったら家主が住宅税をたいてい払っていて家賃はその費用を十全にまかなう設定になっているはず、ライフに行ってお米を買えば(おそらくは)少ないながらも生産者の利益と販売者の利益もとい消費税をまかなっていて、そのお米でカオマンガイをこしらえて自営の店で売るとして誰が消費税をとりたがるのだろう?ようとれんわ。そもそも実務はたいへんで、最近ではただ作って売るだけでは不十分らしくて見た目もよくせなあかんしパクチーをけちってもあかんし味の素をつかってもあかんいう声多かろうし増して輸入食材を援用しようとすれば彼の地の生産者の悲鳴が聞こえてくるし大災難じゃないか。加えて愛なんかも注がなあかんとなれば実務のなかで払うべき対価はだいたいみんなすでに払っているように思えるそもそも居るだけで真っ当なのだ。ちんたらしたらいい。必要とあらば動けばいい。歪みがあれば歪みを埋める囁きだけでいい。寝たくなったら寝たらいい。どうせ寝れば発情するんだもの、甘いと言われてもそうだもの。だったら家でカオマンガイつくって食っとけと言われても、そらぁソトで食いたい。そうやって苦渋をなめている作り手の息を感じたい、といったら多少サディスティックに聞こえるが、そもそもソトで食ったほうが経済的に決まってる、彼らは大量につくってたいてい悲痛なくらい良心的な価格で売ってるんだから、だから食べログプロとかほんまあかんで。家で飯つくるんなら百聞先生とか池波正太郎の嫁さんとかの非営利の仕事でほとばしらないと、あれは実際カネになってるしね。まぁ奥さんたちのあの使役は前時代的に過ぎるんだろうけど、、とはいえ中途半端にグルメを気取るな、死ぬ気で拾った小銭で富士そば富士盛りをノートッピングで食え!意外になんとかなるぞ!けちるうまくやり過ごす家計を円満に纏めるしかも料理はプロ並とか等々実務スペックばっかり上げてくれるな!
あいや、私は
いたって冷静です。

何かが違う

何かが違う

(正午過ぎベルクにて執拗にこの曲が流れる。ベースライン発狂沈没するくらいいいね)

なにせモンク帽がみつかったので寝るときとバイトの時以外冠れる歓びでそれを冠れない結果弱り気になっているバイト中の上司の心無い悪態も又あれを冠れると想えばやり過ごせるし切り替えてすんすん働ける気がするし昇格したら冠りながら働いてしまおう。絞りをきつく締め上げたら頭皮がつり上がってそのまま天井を突き抜けてしまいそうな、そんな気分である。
話は逸走し続けて目黒川を越えて312号線に迂回して武蔵小山の「盛り盛り苑」なる中華屋に至る、、