短歌は馬車に乗って

スイートなエッセイです

スカスカ夢日記3

f:id:kon-fu:20201024134809j:image海の近くの手作り感のある商業施設で働いている。

丘を徒歩で越えて十分くらいで水平線が見えるけれど、何かとばたばたしていて、なかなか出向く機会はないです。

従業員をしているお土産屋は何が売りたいのか、売り手のこちらもいまいち要領を得ず、じっさい上がりはかなり悪そうだ。 

ぱっとしない手拭いとか草鞋とかぬいぐるみとか。誰が買うねんみたいな。

山ぐるみを上司に推したけど、奇抜過ぎるという理由で提案を棄却された。

それなりに知れた景勝地なので人が来ないことはないんだけど、、

もとは教室だった部屋で、あのいわゆる学校机を客席にしているカフェには案外客が埋まっていて、やはり商売はベタにやった方がいいな、とか思ったり。働いている子たちも可愛らしくて差し障りがないよね。

ペットサウンドなんか小音でかけててさ。

窓越しに夕陽が差して暗がりぬ。

これからどこへ行くのかね?

ゴットオンリーノウズ。

 

スタッフ三人、三様にあれこれ思案しながら日が暮れたので、すごすごと店じまいして、中年のおっさんの西岡さんの提案で、浜辺でしっぽり懇親会をすることになった。

西岡さんは濃い茶色のグラサンをかけている、どちらかというとかなり胡散臭い御仁だ。

昭和の匂いを護摩で毎朝焚きつけているような、発言も居住まいもどこか現実から超然としている。

どこから来たのかの問えば、ゼネコンの仕事で来た、と言った。

だけどヘルニアになっちゃってね。何年前だったっけな。

とか、確信をぼやかしたりする。

狭山さんは狭山さんでテキパキしてるようなぼんやりしてるような、平凡な三十路前の女性だ。実家暮らしらしい。

まだ、ぎりぎり薄い上着でやり過ごせれる初秋っぼい晴れの日で、僕がタバコを切らしていたら、西岡さんがウエストというタバコをくれた。

エストはスカスカな味でしかも長い。

パッケージもしらけているというか、それでも今日の昼間の空みたいな現実味の無さとマッチしなくもないな。

紙タバコを吸うと喉に違和感があるようになってきた。

「タバコ好きなんですね」と狭山さんがみもふたもないことを言う。

ええ、と西岡さんが答える。

ギターを持って来ているし、どうやら歌い出すようだ。

赤めいてきた海の向こうの空は次第に現実味を醸し出している。にわかに重たくなる、というか。

さあ、一歩出したあ

と、西岡さんが唐突に立ち上がり、ギターと一緒にやり始めた。

ぎらぎらした金属音と同時に、腹に溜まった空圧みたいのがブハッと飛び出して、これはもしかしたらすごいんかもしれない。

歌詞は説教くさいけど、生で聴くと一味も二味も違うなあ。

狭山さんもしゃんとなってまわりの空気がぴりぴりと震えてるよう。

ときに、なんだか聴いたことがある歌な気がすると気がついて合点がいった。

西岡さんは西岡たかしかもしれん。

考えよーおう

と、野太い声で歌っている。

こんな声、出はんねや

と感心しながら聴いた。