短歌は馬車に乗って

スイートなエッセイです

言いにくいつわり(つはり)はやはり発育にいい

場所はありし日の巨椋池でどうにかしようと思っていたけれど、春節前の落とし穴というか、、結局緊急手術即入院という運びになった。やっぱり特に緊急診察室はゴキブリ一匹見逃すまいとした漂白ライトがパァ!って感じなのでいろいろパァ!ってあばかれてしまう、担ぎ込まれて当直のお兄さん―白衣を羽織った下にアイスの実みたいなとりどりパステルカラーがプリントされてるTシャツを着ていて、それから後の診察の折にも同じようなスタイルだったもんでつまりその着こなしは彼のなにか意思のこもった仕事着なのかも、ほんで五分刈―に触診を受けた、痛かっただろうけども痛みが強すぎたのか痛かったであろうという追憶さえもうすぼんやりになってしまうような痛みのなか何か当直の兄さん先生を直ぐに信頼できないでいた、なんとうか研修医っぽすぎて。そういう気持ちがなんとなく伝わってしまったのか彼は採血を三回失敗して、いささか気持ちの悪い意思疏通の不思議を感じて苛立ちを伝えた方がいいように思った実際痛かったと思うので苛立っていたところも確かにあろうけど、苛立った演技をしてる感じにより近い。彼は蒼白い顔で少し肌が弱そうだったから頼りなさそうに見えやすそうだし、口のきつい患者に因縁つけられやすそうだ確かに、みたいな印象たちが脱水症状で口がカラカラに乾いておるところに入り込んでくる、くつがかあいて、と伝えると腹膜炎の恐れがあるので水は飲めないんです、と言った、そのかわり造影剤というジェルを口に入れられたえげつない不味さでひんやりしている人工的なヘドロの味、それでも喉が乾ききっていたので一抹の清涼感があって、よかった、ところでヘドロはそもそも自然物なんだろうか、痛みの記憶はけっこうかなり曖昧で痛いっていう言葉にけだるく分類されるしかないっていうか、でもあんまり覚えてたらまるでずっと痛くて仕方なくなって何もできんくなるかもしれんからそれはそれでよくできている神のみわざなのかもしれませんな、それにつけ味覚つうのは鮮明なことがなんぼか多い気がする、三十路を過ぎるとみんながみんなどうだかは知らないけれど例えばあの学生街の喫茶店のオムライスが食べたいなと浮かべた刹那味も形も匂いも、グリンピースの食感ひき肉なんだよねここのチキンライスは!そんでいささかでかすぎるけど卵は薄焼きで包んでる感じだからバターはけっこう過剰くらいに使われてるけど最後まで美味しく食べれて途中で厭きたとしてもぶっきらぼうに隅に置いてある大根の糠漬けで箸を休ませればなんてことなく完食、食後のコーヒーは上手くもなく不味くもなくけれど絶妙に飲み口が良くてサンマルクみたいに機械でシャーって出てきていれたては表面が白く泡立ってるタイプのコーヒーなんだけど、結局こういうのが絶妙なんですよ、とか思い浮かべてたら行く必要がないくらいほんまに食った気になるようになってしまった。実際わたしは今最後の一口と一緒に噛み込んだパセリの余韻をしっかりと感じている、、

2001 A Space Odyssey - ending