短歌は馬車に乗って

スイートなエッセイです

東京日記14

行動と記憶というのが毎度あやふやで、なんとなく夕陽を見ようか、と思って赤坂見附で地下鉄を乗り換え、四谷に来たら、さっきから分かっていたことではあるんだけれども曇天につき夕陽は見えないので、Rという喫茶店に来たらビートルズが垂れ流しの店だったことを思い出した。

今はレボリューション1が流れている。

給仕の若い子はものすごくマイペースで、黄色いTシャツをインドのチェック模様のスカートに入れて、膝から下が切り返されて末広がりになっていてひらひらしていて、どことなく全体的に七十年代みたいな雰囲気を匂わせてはいるが、私は七十年代のことを体感しているわけではないから、あくまであやふやで、アクロスザユニバースが流れ出したら以前の同輩で弾き語りをしているOくんのことを思い出して、またどこかでたまたま会いたいなあ、と思っている。

たまたまというところが個人的にポイントなので彼女、カウンター内のマスターが注文を受け、たまごサンドを作ってる間、カウンターの外で背筋を伸ばし、けっこう分厚い文庫本を読んでいる感じが、こちらの喫茶店Rに対する印象付けを再想起させ、ガラス越しに見える街路樹の葉っぱが揺れている。

おそらくや、入れ替わり立ち替わり、ずっと続いてるこの店のバイトのスタイルで、二階の客の喋り声が消え、ビージーエムのビートルズの音が途絶えて、マスターがカウンター内で見ている動画の音が小さく細く漏れ聞こえ、黄色いTシャツの給仕は客用のジャンプを読み出したので、どうやら残客は私ひとりらしい。あとはもう、さっさと出てくれ、ていう醸し出しムードはイケズというか、そもそもそういうルーチンなんだろうし、そとはびゅんびゅん風が吹いているので、外へ出たのがおとついの十八時くらいのこと。

昨日は吉祥寺の高架下で目覚めて酒が残っており、やたら腹が減っていた。まつやで臭いメシを食った。

そんな昨日を回想していたのが実際の昨日のことなわけで、若い兄ちゃんを伴いラブホ街やらクラブ街やらの臭い渋谷の谷間を歩きながら私は予定通りの消化不良で、今朝、起きてコーヒーを淹れていたら昨日は帰宅するなりぶっ倒れていたしんやくんが起き抜け、起き抜けからデスクトップを叩いている。コーヒーを勧めたら小休止に入り「なんか年々早まってるな!濃密なんやけど早すぎる!」と言っており、おおむね同意なわけでありますが、平日の朝の喫茶店Tは、ゆったりした時間が流れていて、マスターのワンオペながら、コーヒーを出す間隙にカウンターの端でカバーを掛けた文庫本を読んでいたりするので、かきいれどきと比べてコーヒーが美味しく感じられる。

正午らへんからスタッフが入り、グループ客が入り出し、バタバタしだし、それはそれでなんともいえないナイスムードに突入するんだろうけども、早さはどんどん早まっていって週末に至るかんじ。